現在、有機導体(電荷移動型錯体)に関する磁気光学共鳴(主に電子スピン共鳴ESR/EMR, サイクロトロン共鳴CR, POR)の研究を中心課題としてやっております。それと同時平行で空間分解EMR装置の開発や、輸送測定などの研究も行っております。
有機導体は主に有機分子で構成される伝導層と無機分子で構成される絶縁層からなります。伝導層と絶縁層が交互に積み重なっているために、擬2次元または擬1次元の伝導異方性を示します(伝導層の面内方向に流れやすく、層間方向は非常に流れにくい)。最近では、絶縁層の無機分子に磁性イオンをいれることによって、磁性イオンのd電子と伝導を担っているπ電子の相互作用を調べる研究が盛んに行われています。私はその磁性イオンを含んだ有機導体の電子状態を調べるために電子スピン共鳴ESR/EMRの測定を行っております。 |
上で述べたように、有機導体は主に擬2次元または擬1次元の電子系を持ちます。そして電子系が擬1次元もしくは擬2次元の場合、それを上の図のようなフェルミ面(電子でできたミクロな海のようなもの)で現す事ができます(左:擬1次元系 右:擬2次元系)。これらフェルミ面はその物質の電子状態及び基底状態を調べるためには非常に重要です。強い磁場を使った測定法でフェルミ面を調べる方法は (1)量子振動(Shubnikov-de Haas, de Haas-van Alphen Oscillations) (2)角度依存性磁気抵抗振動(ADMRO) (3)磁気光学共鳴(サイクロトロン共鳴、Periodic Orbit Resonance) の3つが主にありますが、私は最後の磁気光学共鳴を用いたフェルミ面の研究を行っております。比較的新しいフェルミ面の測定法なのであまり良く知られてませんが、非常に有効である事が現在示されております。 |
現在、空間分解能をもったEMR装置の開発を行っております。左図はワイヤーを2次元的にスキャンした時のCavity透過量をイメージングしたものです。将来的にEMRシグナルがイメージングできるようになると、生物系、地学系の研究に応用ができるようになります。 |